2019年02月24日

ショパン:ノクターン第9番 op.32-1

スルタノフが演奏するノクターンと言えば、1995年のショパンコンクールや日本公演でも演奏した13番が圧倒的に知られています。その中で、実は残された音源の中に1つだけまぎれて、ノクターンの9番が演奏されているものがあります。非常に貴重な録音です。



このYouTubeの動画には1984年、15歳の時、という記載がありますが、私はこれについて確信はありません。
間違いないのは、「現カザフスタンのアルマトイ(当時のアルマ・アタ)」での公演で、おそらくチャイコフスキーの協奏曲を弾いた時のアンコールではないか、と思っています。また、クライバーンでのデビュー後にカザフスタン公演を行った記録はないので、1984年というのも根拠があるのかもしれません。

なお、スルタノフはパデレフスキ版の楽譜でショパンを弾いていた、と言われていますが、ここの小節は少し変えてCisを再度弾いています。世の中には、この録音のような楽譜も存在しているため、ひょっとするとソ連時代の楽譜の影響であったり、ナウモフ先生の指導であったり、背景があるのかもしれません。
また、最後に突然でてくるG7 も、ppではなくfで弾いており、そこも興味深いです。
Nocturne32-1.png
posted by Murakami at 11:30| Comment(0) | 演奏

2019年02月17日

チャイコフスキーの四季

前回は、ドゥムカの演奏を紹介しましたが、スルタノフはチャイコフスキーの四季の録音もいくつか残しています。当時オフィシャルホームページのレパートリには、「四季」とだけ書かれていましたが、実際には12曲の録音はなく、残されているのは2曲のみです。

スルタノフが出場した1986年と1998年のチャイコフスキーコンクールでは、四季が課題曲に含まれるため、何か1曲を選んで弾く必要があります。現在は何を弾いたか知られていますが、皆さんだったら、何月を弾くのがスルタノフらしいと思われるでしょうか。私はもう少し元気なものを選ぶかと思い、「10月」や「11月」は少し意外でした。

さて、1998年のチャイコフスキーコンクールで演奏した「10月」は、最終的には Chicago Tribune の追悼記事でも音源が紹介されるなど、あまりコンサートでは演奏されなかったレパートリですが、そこそこ知られるようになりました。



実際の演奏姿はこちらです。1次予選で、熱情ソナタ1楽章の直後、3曲目として演奏されました。ppからffまで、コンクール出場者の演奏とは思えない円熟の演奏です。ゆっくりな演奏の中でも、ホールに音が非常によく響いているのがわかります。


さて、嬉しいことに、10月だけでは11月の演奏も残っています。1986年のチャイコフスキーコンクールでは、11月のほうを演奏しており、その時な貴重な録音も残っているのです。


さらに、実は1998年のチャイコフスキーコンクールの「リハーサル」という動画の中では、何故か10月ではなくて、11月が演奏されています。この「リハーサル」というのは、「予備予選」のことではないかと言われています。いずれにせよ、コンサートで演奏されなかったレパートリをこのように12年間の成長を比較しながら聴けるというのは、大変ありがたいことです。
posted by Murakami at 11:30| Comment(0) | 演奏

2019年02月10日

チャイコフスキー:ドゥムカ

YouTubeを見ていると、スルタノフの演奏するドゥムカが楽譜と一緒に投稿されていました。このように楽譜と一緒に演奏を聴くと、より理解が進みますのでご紹介させて頂きます。


例えば 3:10 から始まるフレーズは楽譜を少し変えて弾かれているのがわかります。内声などの工夫もあちこちでおこなわれており、特に4:12からのフレーズは、楽譜のどこにそんな音が書いてあるのか見失うほどです。4:55からのオクターブのテクニックも見事ですね。

なお、答え合わせのようですが、この音源は、間違いなく 1998年のチャイコフスキーコンクールでの演奏です。以下を聴いてみるとわかるかと思います。


結構コンクールで大胆な演奏をしているのがわかりますね。1986年(16歳)のチャイコフスキーコンクールでもこの曲を弾いていますが、これほど自由な演奏でないことを考えると、1998年は既にコンサートピアニストとして活躍しており、コンサートでのあるかのように演奏しているということがわかります。

さて、最後にホロヴィッツの演奏をご紹介します。上記を確認してからこのホロヴィッツの演奏を聴くと、いかにスルタノフがホロヴィッツに影響を受けていたかがわかるかと思います。
posted by Murakami at 17:36| Comment(0) | 演奏

2019年02月03日

スルタノフと謎の組織 O.T.S について

スルタノフ情報を調べてみると、スルタノフと親交があった方々からの過去の写真などに関する投稿を目にすることがあります。こちらは、Alexei Sultanov という Facebook のコミュニティに対して、写真がタグ付けされたものです。
(コミュニティに入らないとアクセス出来ないかもしれませんし、ひょっとすると写真にタグ付けされている誰かと知り合いでないと見れないかもしれませんが、写真自体にはそれほど価値があるものでもないと思います)

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ここには、O.T.S というお揃いのTシャツを着た4人(お揃いといっても、それぞれ自分のイニシャルと役割が入っていて微妙に異なる)が写っています。
A.S. THE PRESIDENT OF O.T.S というTシャツを着たスルタノフが写っており、一緒には、Alexander Korsantia氏、George Vatchnadze氏、Maxim Mogilevsky氏が写っています。
これは歴史的にも面白い写真でありますし、またスルタノフが仲良くしていた同世代の一流ピアニストがわかる、という意味でも興味深いです。

このO.T.Sですが、Outstanding ... という意味なのかと想像したりもしますが、メンバーのモギレフスキー氏によると、「コンクールでよい結果を残せなかったメンバーの集いで、アレクセイはチャイコフスキーで残念だったからプレジデントになった。O.T.Sという略語が何かは、とても言うことは出来ない」とのことです。
とはいっても、有名コンクールの勝者を含む、なかなかの豪華メンツです。彼らの音楽を聴くことで学べることも思いますので、O.T.S の残りのメンバーもご紹介したいと思います。

Alexander Korsantia氏は、シドニーとルービンシュタインを優勝した素晴らしいピアニストです。スルタノフの葬儀サービスにも出席していますし、スルタノフ自身がお気に入りのピアニストであったと話していたことがあり、最も仲の良いピアニストの1人だったと想像されます。
録音では、ストラヴィンスキー=アゴスティ=コルサンティアの火の鳥があります。ラ・ヴァルスのピアノ編曲も楽譜出版されているそうです。教育者としても活躍されていて、YouTubeには興味深いレッスンビデオなどもあります。


George Vatchnadze氏もジョージア出身のピアニストで、現在はシカゴで教えられているようです。今年の年初は日本で過ごされたようです。
プロコフィエフの録音があるようです。YouTubeでもいくつか音源があるようです。


Maxim Mogilevsky氏は、こちらのロシアピアニズムの本でも紹介されていますが、よく来日された、あちこちの音大でマスタークラスをされています。ナウモフ門下であり、またアシスタントもされていました。
モギレフスキー氏は、お父様はエリザベート優勝、そしてご先祖には、スクリャービンの知人でもあり東京芸術大学で初期のヴァイオリン教育に多大な貢献をされたアレクサンドル・モギレフスキー先生がいらっしゃる音楽一家であり、また、親日家でもあります。小平霊園にも来日時にはよく行かれているようです。日本国際音楽コンクールで入賞されており、そのCDに収録されたペトルーシュカは名演です。

若き日のスルタノフが切磋琢磨したピアニストたちの活躍からも見えるものがあると思いますので、今日はO.T.S仲間の3人のピアニストをご紹介してみました。
posted by Murakami at 12:24| Comment(0) | 歴史

2019年01月27日

ロシアピアニズムに関する本が出版されました

スルタノフと直接関係があるわけではありませんが、ロシアピアニズムに関連する本が発売されたため、ご紹介させて頂きます。本の中では、スルタノフファンとしては知っておくべき多くのことが書かれており、一読の価値があります。



著者の大野眞嗣先生は、これまでもご自身のブログで時々スルタノフのことをご紹介下さっています。例えば、最近ではスルタノフの発達した手についてを言及されています。

789.手を見ればわかる
792.焼き鳥かスルメか

また、スルタノフのご家族が来日されたときにも親睦を深めていらっしゃいます。

195.アレクセイ・スルタノフ夫人を迎えて
377.S.スルタノフ氏を迎えて

スルタノフを好きな皆さんは、その演奏であったり、生き様であったり、容姿であったり、いろいろなところに惹かれていると思います。例えば、超絶的なテクニックであったり、甘い歌いまわしであったり、大胆な解釈であったり、などファンの数だけ楽しむポイントがあるでしょう。
ロシアピアニズムという言葉は、スルタノフファンはもちろんのこと、ロシアのピアノ教育を受けたピアニストたちの素晴らしい演奏を思えば大変魅力的ですが、案外実体はわかりにくいものです。この本を読むことで、その詳細を知ることで、スルタノフを始めとする個々のピアニストのさらに深い真の魅力がわかるようになると思います。

スルタノフファンとして、ロシアピアニズムのエッセンスを学ぶことで、より深い理解を得られますが、それとは別に、この本ではスルタノフと関連深いピアニストたちの話題もあり、その点でも興味深いです。
例えば、ネイガウスは、スルタノフの師匠、レフ・ナウモフの師匠でありますが、ネイガウスに関連する話があり、また、そのナウモフ門下である、アンナ・マリコヴァ氏の話も含まれています。アンナ・マリコヴァはスルタノフと同じ、タマーラ・ポポヴィチ先生にタシケント時代に習っており、スルタノフにナウモフ先生を紹介した先輩でもあります。
さらに、マキシム・モギレフスキー氏の話も出ていますが、モギレフスキーも同じくナウモフ門下であり、スルタノフとは直接の交流があって仲良くしていました。
もちろん、スルタノフが敬愛し、最も影響を受けたホロヴィッツについても考察が書かれております。

これらを理解することで、スルタノフの音源を鑑賞することが、ますます楽しくなるはずです。専門的なことはわからない、という方もいらっしゃると思いますが、この本ではロシアピアニズムのエッセンスが素人にもわかりやすくまとめられているため、ご興味があれば是非ご一読下さい。
posted by Murakami at 20:22| Comment(0) | お知らせ