2019年02月10日

チャイコフスキー:ドゥムカ

YouTubeを見ていると、スルタノフの演奏するドゥムカが楽譜と一緒に投稿されていました。このように楽譜と一緒に演奏を聴くと、より理解が進みますのでご紹介させて頂きます。


例えば 3:10 から始まるフレーズは楽譜を少し変えて弾かれているのがわかります。内声などの工夫もあちこちでおこなわれており、特に4:12からのフレーズは、楽譜のどこにそんな音が書いてあるのか見失うほどです。4:55からのオクターブのテクニックも見事ですね。

なお、答え合わせのようですが、この音源は、間違いなく 1998年のチャイコフスキーコンクールでの演奏です。以下を聴いてみるとわかるかと思います。


結構コンクールで大胆な演奏をしているのがわかりますね。1986年(16歳)のチャイコフスキーコンクールでもこの曲を弾いていますが、これほど自由な演奏でないことを考えると、1998年は既にコンサートピアニストとして活躍しており、コンサートでのあるかのように演奏しているということがわかります。

さて、最後にホロヴィッツの演奏をご紹介します。上記を確認してからこのホロヴィッツの演奏を聴くと、いかにスルタノフがホロヴィッツに影響を受けていたかがわかるかと思います。
posted by Murakami at 17:36| Comment(0) | 演奏

2019年02月03日

スルタノフと謎の組織 O.T.S について

スルタノフ情報を調べてみると、スルタノフと親交があった方々からの過去の写真などに関する投稿を目にすることがあります。こちらは、Alexei Sultanov という Facebook のコミュニティに対して、写真がタグ付けされたものです。
(コミュニティに入らないとアクセス出来ないかもしれませんし、ひょっとすると写真にタグ付けされている誰かと知り合いでないと見れないかもしれませんが、写真自体にはそれほど価値があるものでもないと思います)

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ここには、O.T.S というお揃いのTシャツを着た4人(お揃いといっても、それぞれ自分のイニシャルと役割が入っていて微妙に異なる)が写っています。
A.S. THE PRESIDENT OF O.T.S というTシャツを着たスルタノフが写っており、一緒には、Alexander Korsantia氏、George Vatchnadze氏、Maxim Mogilevsky氏が写っています。
これは歴史的にも面白い写真でありますし、またスルタノフが仲良くしていた同世代の一流ピアニストがわかる、という意味でも興味深いです。

このO.T.Sですが、Outstanding ... という意味なのかと想像したりもしますが、メンバーのモギレフスキー氏によると、「コンクールでよい結果を残せなかったメンバーの集いで、アレクセイはチャイコフスキーで残念だったからプレジデントになった。O.T.Sという略語が何かは、とても言うことは出来ない」とのことです。
とはいっても、有名コンクールの勝者を含む、なかなかの豪華メンツです。彼らの音楽を聴くことで学べることも思いますので、O.T.S の残りのメンバーもご紹介したいと思います。

Alexander Korsantia氏は、シドニーとルービンシュタインを優勝した素晴らしいピアニストです。スルタノフの葬儀サービスにも出席していますし、スルタノフ自身がお気に入りのピアニストであったと話していたことがあり、最も仲の良いピアニストの1人だったと想像されます。
録音では、ストラヴィンスキー=アゴスティ=コルサンティアの火の鳥があります。ラ・ヴァルスのピアノ編曲も楽譜出版されているそうです。教育者としても活躍されていて、YouTubeには興味深いレッスンビデオなどもあります。


George Vatchnadze氏もジョージア出身のピアニストで、現在はシカゴで教えられているようです。今年の年初は日本で過ごされたようです。
プロコフィエフの録音があるようです。YouTubeでもいくつか音源があるようです。


Maxim Mogilevsky氏は、こちらのロシアピアニズムの本でも紹介されていますが、よく来日された、あちこちの音大でマスタークラスをされています。ナウモフ門下であり、またアシスタントもされていました。
モギレフスキー氏は、お父様はエリザベート優勝、そしてご先祖には、スクリャービンの知人でもあり東京芸術大学で初期のヴァイオリン教育に多大な貢献をされたアレクサンドル・モギレフスキー先生がいらっしゃる音楽一家であり、また、親日家でもあります。小平霊園にも来日時にはよく行かれているようです。日本国際音楽コンクールで入賞されており、そのCDに収録されたペトルーシュカは名演です。

若き日のスルタノフが切磋琢磨したピアニストたちの活躍からも見えるものがあると思いますので、今日はO.T.S仲間の3人のピアニストをご紹介してみました。
posted by Murakami at 12:24| Comment(0) | 歴史

2019年01月27日

ロシアピアニズムに関する本が出版されました

スルタノフと直接関係があるわけではありませんが、ロシアピアニズムに関連する本が発売されたため、ご紹介させて頂きます。本の中では、スルタノフファンとしては知っておくべき多くのことが書かれており、一読の価値があります。



著者の大野眞嗣先生は、これまでもご自身のブログで時々スルタノフのことをご紹介下さっています。例えば、最近ではスルタノフの発達した手についてを言及されています。

789.手を見ればわかる
792.焼き鳥かスルメか

また、スルタノフのご家族が来日されたときにも親睦を深めていらっしゃいます。

195.アレクセイ・スルタノフ夫人を迎えて
377.S.スルタノフ氏を迎えて

スルタノフを好きな皆さんは、その演奏であったり、生き様であったり、容姿であったり、いろいろなところに惹かれていると思います。例えば、超絶的なテクニックであったり、甘い歌いまわしであったり、大胆な解釈であったり、などファンの数だけ楽しむポイントがあるでしょう。
ロシアピアニズムという言葉は、スルタノフファンはもちろんのこと、ロシアのピアノ教育を受けたピアニストたちの素晴らしい演奏を思えば大変魅力的ですが、案外実体はわかりにくいものです。この本を読むことで、その詳細を知ることで、スルタノフを始めとする個々のピアニストのさらに深い真の魅力がわかるようになると思います。

スルタノフファンとして、ロシアピアニズムのエッセンスを学ぶことで、より深い理解を得られますが、それとは別に、この本ではスルタノフと関連深いピアニストたちの話題もあり、その点でも興味深いです。
例えば、ネイガウスは、スルタノフの師匠、レフ・ナウモフの師匠でありますが、ネイガウスに関連する話があり、また、そのナウモフ門下である、アンナ・マリコヴァ氏の話も含まれています。アンナ・マリコヴァはスルタノフと同じ、タマーラ・ポポヴィチ先生にタシケント時代に習っており、スルタノフにナウモフ先生を紹介した先輩でもあります。
さらに、マキシム・モギレフスキー氏の話も出ていますが、モギレフスキーも同じくナウモフ門下であり、スルタノフとは直接の交流があって仲良くしていました。
もちろん、スルタノフが敬愛し、最も影響を受けたホロヴィッツについても考察が書かれております。

これらを理解することで、スルタノフの音源を鑑賞することが、ますます楽しくなるはずです。専門的なことはわからない、という方もいらっしゃると思いますが、この本ではロシアピアニズムのエッセンスが素人にもわかりやすくまとめられているため、ご興味があれば是非ご一読下さい。
posted by Murakami at 20:22| Comment(0) | お知らせ

2019年01月20日

デビュー公演について

以前、モーツァルトの K.382 の録音をご紹介しましたが、この曲目はスルタノフのデビューでもあります。

YouTube上に少年時代のスルタノフが演奏した録音がありましたので、それをご紹介したいと思います。


実はこの録音は、私もCDでご家族より、まだYouTubeが存在しなかった頃に頂きました。スルタノフのご家族は過去の録音をプライベートCD化されており、弟さんや奥様が配られています。私の手元には、両方の版があるのですが、奥様から頂いたCDの写真も折角ですのでご紹介したいと思います。

DebutCD.jpeg

ところで、スルタノフがこの曲でデビューしたのは 1977年5月であり7歳の時だったと知られていますが、このCDやYouTubeには8歳という記載があります。この5月のデビューについてご家族が録音を持っているのは間違いないのですが、この公開音源なのかどうかは定かではありません。おそらく、記載の誤りで、この録音は1977年5月の演奏、つまり7歳の時の演奏ではないかと思います。指揮者はV. A. Belenky.の可能性が高いと見ています。

この録音は現在デジタル化されて残されているスルタノフの録音の中で、最も古いもののはずです。まだナウモフ先生とは出会う前で、ポポヴィチ先生からたたき込まれたピアニズムと、持って生まれた音楽性のみで出来上がった演奏です。是非お楽しみ下さい。
posted by Murakami at 00:18| Comment(0) | コンサート

2019年01月13日

モーツァルト:ピアノ協奏曲第20番 K.466

前回モーツァルトの演奏をご紹介しました。(モーツァルト:ピアノと管弦楽のためのロンド ニ長調 K382

この時の公演(1994年の11月18-19にテキサス州エルパソ)で弾いた、モーツァルトの20番の録音も貴重なものとして残っています。モーツァルトの20番はスルタノフは子供の頃から弾いており、10歳の頃の録音も残されています。これは、タマーラ・ポポヴィチ門下の他の神童も弾いていることを見ると、ポポヴィチ先生の教育方針だったとも見えます。
この曲は、大人になってからも時々弾いていますが、記録を見る限りその機会はかなり限られています。1999年4月9日、ポーランドのカトヴィッツェでの演奏(ポーランド国立放送交響楽団。指揮:Gaetano Delogu)がポーランドのラジオで放送されたことがありますが、今現在流通されている音源は、このYouTubeにある1994年のもののみと言えます。



録音状態にはほんの少し惜しいところがあるのですが、あちこちにスルタノフの工夫が満載であることがよくわかります。その工夫により、曲は大変魅力的に加工されており、モーツァルト自身このような演奏を望んだのではないか、などと称賛されています。カデンツァはベートーベンを使っています。演奏は全般的に1999年の録音と同じようなスタイルで弾かれていますが、カデンツァのトリルの弾き方など異なっているところもあり、5年間で演奏スタイルがどのように変わったかなどの研究対象としても重要です。

この曲が日本で演奏された記録はないと思いますが、この貴重な録音がこうして残されていることに感謝しつつ、是非演奏をお楽しみ下さい。
posted by Murakami at 23:09| Comment(0) | 演奏