前回のブログで、ポポヴィチ先生とスルタノフに関する内容をご紹介しました。本日は、ポポヴィチ門下の優秀な生徒たちを紹介しながら、スルタノフとの関係についてを紹介していこうと思います。
まず最初は、1990年のショパンコンクールで5位入賞の
Anna Malikova です。
彼女は、1965年生まれなのでスルタノフより4歳年上になります。タシケント生まれで、ウスペンスキー音楽学校でタマーラ・ポポヴィチ先生についており、14歳からモスクワ中央音楽学校でナウモフ先生に師事します。
ポポヴィチ門下がナウモフ先生にその後師事するケースは多いのですが、おそらく彼女が最初ではないかと思います。ポポヴィチ先生とナウモフ先生がどれだけ会話をされていたかわかりませんが、少なくとも、当時タシケントで天才少年であったスルタノフを、ナウモフ先生に紹介したのは、Anna Malikovaだと言われています。
次に紹介するのは
Lola Astanova です。彼女は日本ではあまり知られてはいませんが、世界的には大変有名です。例えば
Lola Astanova の Facebook ページは執筆現在 17万件以上のいいねがついており、これは、15万件の
Yuja Wang の Facebookページを上回ります。なお、Lola Astanova は超絶技巧を売りにしつつも、ファッションリーダーとしても有名です。ある記事のタイトルでは、「
Meet Russia’s answer to Yuja Wang」という形で紹介されていました。
さて、彼女は
自身のホームページで、影響を受けた人に「ラフマニノフ、ショパン、ホロヴィッツ、スルタノフ」と語っています。
こんなかんじです。
私が最初にアレクセイに会ったのは、まだ子供だったときでしたが、それはものすごい印象でした。それから、10代になり、コンサートで彼を聞いたとき、私の中で何かが動いたのです。それは、私にとって本当に重要な瞬間で、それ以来、私はもう、これまでと同じようには弾かなくなりました
彼女自身、スルタノフと同じく、ポポヴィチ先生に習った後、モスクワ音楽院でナウモフ先生に師事しています。
さて、Lola Astanova は視聴者とのコミュニケーションが得意なタイプのアーティストで、以前、ピアニストのウォームアップについて動画をアップしていました。その動画は今 YouTube からないようですので、別サイトにある同じ動画を、以下のリンクで紹介しておきます。
Ask Lola - Warm-up routine上記リンク先の動画は、最初は話が入っているので、お急ぎの方は、3分あたりから見て頂くとよいと思います。この動画は、右手と左手のポジションはオクターブではなく、10度で開始していますが、一般的に Formula Pattern と呼ばれているタイプの練習方法でして、オクターブでやることが多いと思います。(Formula Patterの詳細は
こちらも参考)。この練習方法について、スルタノフの弟のセルゲイ氏に聞いてみたところ、このやり方はポポヴィチ先生の指導だ、とのことでした。若きスルタノフを作り上げたポポヴィチメソッドを研究する上で大変興味深いです。
なお、彼女はウォームアップについて、また別の動画をアップしております。これはオリジナルなのか、それとも、やはりポポヴィチ先生から習ったものなのか、興味深いところです。
次に紹介するのは、Tamila Salimjanova です。彼女は2009年の浜松国際ピアノコンクールに出場していますし、2015年のショパンコンクールをはじめ、いくつか国際ピアノコンクールに参加しているので、ご存知の方もいらっしゃると思います。2012年ブラジルのBNDESコンクールで優勝しています。
以下のメフィストワルツはそのコンクールで弾いたときの演奏です。コンクールですので、基本は楽譜に忠実に弾いていますが、スルタノフの演奏に詳しい方は、影響を受けていることがわかると思います。私としては、このメフィストよりも彼女の弾く、ショパンのバラード4番やドビュッシーの喜びの島、メンデルスゾーンの厳格なる変奏曲などに魅力を感じますが、今回はスルタノフつながりということで、こちらの動画をご紹介させて頂きます。
ところで、2014年8月に私が"
Tribute to Sultanov" というスルタノフへの記念コンサートを開催したときに、Tamila Salimjanova はこのようなメッセージを送ってくれました。このメッセージはコンサートの直前、2014年8月7日に届いたものです。
アレクセイ・スルタノフは、いつでも私のインスピレーションです。ステージに向かう前、私は必ず、彼とポポヴィチ先生に感謝するようにしており、彼とポポヴィチ先生は、いつも自分の心の中にいるのです。
本日、8月7日はアレクセイの誕生日であり、私はチャイコフスキーのピアノ協奏曲を演奏することになっていますが、この演奏は、アレクセイに捧げて演奏するものだと、自分の中では決めています。日本のコンサートでも成功をお祈りいたします。
私は世界中でたくさんの人々が、いまだに彼のことを覚えており、尊敬し、そして愛し続けていることを知って大変嬉しく思います。どうもありがとうございます。そして、私たちの音楽で、アレクセイに特別なことをしてあげましょう!
いかがでしょう。彼女の中で、いかにスルタノフが特別なのか、おわかり頂けると思います。
なお、Lola Astanova と Tamila Salimjanova は2人とも、
Moscow International F. Chopin Competition for Young Pianistsで入賞しているという共通点もあります。二人の演奏スタイルもやや似ていて、スルタノフはどちらかというと、ナウモフ門下的な弾き方、この2人はどちらかというとポポヴィチ門下的な弾き方なのかな、と個人的には感じています。
日本ではほぼ無名と言えますが、ピアニストの Ulugbek Palvanov氏もポポヴィチ先生に習い、その後モスクワでナウモフ先生に師事しています。彼のスルタノフに対する直接的なコメントは取れていませんが、彼が YouTube にアップした自身のチャンネルを見てください。
https://www.youtube.com/user/Nissor/videos自分のビデオをたくさんアップする中で、スルタノフの動画もアップしてくれています。かなり貴重な動画がみれるのも、彼のおかげといえるでしょう。彼自身の演奏もなかなか素敵ですし、同門としての資料でもありますので、是非見てみて下さい。
最後に2名、ポポヴィチ先生の門下生をご紹介します。
1名目は、かつて浜松国際コンクールも受験しにきた、
Fazliddin Husanov氏です。彼も、その後ナウモフ先生についています。残念ながら、今のところスルタノフに関するコメントは取れていませんが、偉大になる先輩として影響はあったことだと思います。
そして、最後は、
ベフゾド・アブドゥライモフです。N響とも共演して、その時演奏したラフマニノフのピアノ協奏曲3番はTV放映もされましたので、ご存知の方も多いと思います。こちらもスルタノフへのコメントは確認出来ていませんが、ポポヴィチ門下最後の大物ですので、是非応援してあげて下さい。
posted by Murakami at 18:33|
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