2019年03月10日

リスト=ホロヴィッツ ハンガリー狂詩曲第2番

今回は、リスト=ホロヴィッツのハンガリー狂詩曲第2番をご紹介します。
この曲は1999年の公演シリーズの本プログラムの最後として演奏されていました。リストのソナタを弾いた後、さらにこの曲を弾くのですから、たいした体力と集中力です。


技術的なレベルの高さはもちろんのこと、スルタノフの人間的な魅力がよくあらわれた演奏で、この日の聴衆はみんな幸せな顔をしてサイン会に並んでいたことを覚えています。

さらには2000年のツアーでも、数々のホロヴィッツ編曲とあわせて使われており、2000年3月に、ラトビアのリガで行われたライブ録音は、ライブ・イン・リガとしてCDにもなりました。
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さて、この曲はホロヴィッツが正式に楽譜を書き残したわけではありませんので、スルタノフは、採譜された楽譜や自らの耳を使って再現したと思われます。採譜されたものも、当時(1999年)はPDFとしてインターネットで入手出来るものではなく、コピーなどが繰り返されたものを見たのではないかと思います。
この演奏は、聴く人が聴くと、ホロヴィッツのオリジナルとは音が異なる、「スルタノフ編」とも言えるそうですが、これはベースに使った楽譜のせいかもしれませんし、本人のアイディアなのかもしれません。
耳に自信がある皆様は、ホロヴィッツのオリジナルも聴いてみて比べてみるのも面白いと思います。


このリスト=ホロヴィッツのハンガリー狂詩曲第2番ですが、今度 3月31日(日) の "Tribute to Sultanov Vol.5" コンサートにて「スルタノフ版」として演奏されます。大変貴重な生演奏の機会ですので、ご興味ありましたら是非以下のコンサートへご来場ください。
Tribute to Sultanov Vol.5 〜今泉響平 CD発売記念リサイタル〜
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posted by Murakami at 17:27| Comment(0) | 演奏

2019年03月03日

シューベルトの即興曲 op.90-4

スルタノフの後期のレパートリの1つ、シューベルトの即興曲 op.90-4 をご紹介します。
この曲は、おそらく1999年の公演用として使われ出したかと思います。東京公演など、本プログラムにない公演ではアンコールピースとしてよく演奏されましたし、名古屋公演では本プログラムの中の1曲として使われました。
この曲は「スルタノフ編」と言ってもよい解釈で演奏されていて、立体的に表現されています。初めて聞いた方は、そのスルタノフワールドに驚かれたかと思います。正式な録音は残っていないものの、幸いライブ録音が残っていました。


ホロヴィッツもこの曲を演奏しておりますので、あわせて聞いてみると影響や違いなどがわかって面白いかと思います。


さて、このシューベルトの即興曲 op.90-4(スルタノフ編) ですが、今度 3月31日(日) の "Tribute to Sultanov Vol.5" コンサートにて演奏されます。生演奏では滅多に聴けないレパートリになりますので、ご興味ありましたら是非以下のコンサートへご来場ください。

Tribute to Sultanov Vol.5 〜今泉響平 CD発売記念リサイタル〜

今回ご紹介するスルタノフの演奏やホロヴィッツの演奏と共に、こちらのコンサートもスルタノフやホロヴィッツの演奏をより楽しむ1つのきっかけとして、お越し頂けると嬉しいです。

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posted by Murakami at 11:53| Comment(0) | 演奏

2019年02月24日

ショパン:ノクターン第9番 op.32-1

スルタノフが演奏するノクターンと言えば、1995年のショパンコンクールや日本公演でも演奏した13番が圧倒的に知られています。その中で、実は残された音源の中に1つだけまぎれて、ノクターンの9番が演奏されているものがあります。非常に貴重な録音です。



このYouTubeの動画には1984年、15歳の時、という記載がありますが、私はこれについて確信はありません。
間違いないのは、「現カザフスタンのアルマトイ(当時のアルマ・アタ)」での公演で、おそらくチャイコフスキーの協奏曲を弾いた時のアンコールではないか、と思っています。また、クライバーンでのデビュー後にカザフスタン公演を行った記録はないので、1984年というのも根拠があるのかもしれません。

なお、スルタノフはパデレフスキ版の楽譜でショパンを弾いていた、と言われていますが、ここの小節は少し変えてCisを再度弾いています。世の中には、この録音のような楽譜も存在しているため、ひょっとするとソ連時代の楽譜の影響であったり、ナウモフ先生の指導であったり、背景があるのかもしれません。
また、最後に突然でてくるG7 も、ppではなくfで弾いており、そこも興味深いです。
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posted by Murakami at 11:30| Comment(0) | 演奏

2019年02月17日

チャイコフスキーの四季

前回は、ドゥムカの演奏を紹介しましたが、スルタノフはチャイコフスキーの四季の録音もいくつか残しています。当時オフィシャルホームページのレパートリには、「四季」とだけ書かれていましたが、実際には12曲の録音はなく、残されているのは2曲のみです。

スルタノフが出場した1986年と1998年のチャイコフスキーコンクールでは、四季が課題曲に含まれるため、何か1曲を選んで弾く必要があります。現在は何を弾いたか知られていますが、皆さんだったら、何月を弾くのがスルタノフらしいと思われるでしょうか。私はもう少し元気なものを選ぶかと思い、「10月」や「11月」は少し意外でした。

さて、1998年のチャイコフスキーコンクールで演奏した「10月」は、最終的には Chicago Tribune の追悼記事でも音源が紹介されるなど、あまりコンサートでは演奏されなかったレパートリですが、そこそこ知られるようになりました。



実際の演奏姿はこちらです。1次予選で、熱情ソナタ1楽章の直後、3曲目として演奏されました。ppからffまで、コンクール出場者の演奏とは思えない円熟の演奏です。ゆっくりな演奏の中でも、ホールに音が非常によく響いているのがわかります。


さて、嬉しいことに、10月だけでは11月の演奏も残っています。1986年のチャイコフスキーコンクールでは、11月のほうを演奏しており、その時な貴重な録音も残っているのです。


さらに、実は1998年のチャイコフスキーコンクールの「リハーサル」という動画の中では、何故か10月ではなくて、11月が演奏されています。この「リハーサル」というのは、「予備予選」のことではないかと言われています。いずれにせよ、コンサートで演奏されなかったレパートリをこのように12年間の成長を比較しながら聴けるというのは、大変ありがたいことです。
posted by Murakami at 11:30| Comment(0) | 演奏

2019年02月10日

チャイコフスキー:ドゥムカ

YouTubeを見ていると、スルタノフの演奏するドゥムカが楽譜と一緒に投稿されていました。このように楽譜と一緒に演奏を聴くと、より理解が進みますのでご紹介させて頂きます。


例えば 3:10 から始まるフレーズは楽譜を少し変えて弾かれているのがわかります。内声などの工夫もあちこちでおこなわれており、特に4:12からのフレーズは、楽譜のどこにそんな音が書いてあるのか見失うほどです。4:55からのオクターブのテクニックも見事ですね。

なお、答え合わせのようですが、この音源は、間違いなく 1998年のチャイコフスキーコンクールでの演奏です。以下を聴いてみるとわかるかと思います。


結構コンクールで大胆な演奏をしているのがわかりますね。1986年(16歳)のチャイコフスキーコンクールでもこの曲を弾いていますが、これほど自由な演奏でないことを考えると、1998年は既にコンサートピアニストとして活躍しており、コンサートでのあるかのように演奏しているということがわかります。

さて、最後にホロヴィッツの演奏をご紹介します。上記を確認してからこのホロヴィッツの演奏を聴くと、いかにスルタノフがホロヴィッツに影響を受けていたかがわかるかと思います。
posted by Murakami at 17:36| Comment(0) | 演奏