2018年03月24日

半音階の魅力

スルタノフの演奏をよく聴いてみると、実は完全に楽譜に書かれている通りではなく、時々ちょっとした工夫が追加されていて、それが大変魅力的に聴こえることがあります。クラシック音楽の世界、特に教育段階において、こういったアプローチは否定されるケースも多いと思いますが、外野の意見を恐れることなく、自身のとって理想の芸術表現を最大限に追及していく姿は、いかにもスルタノフらしいと思います。

さて、本日は、残された録音の中から、半音階を使って曲の魅力をさらに引き出している演奏を3つ、楽譜と共にご紹介したいと思います。(楽譜はクリックすると大きくなります)

まずは、わかりやすいですが、こちらのショパンのワルツ第1番「華麗なる大円舞曲」です。

いろいろと立体的に工夫された演奏ですが、今日のテーマ半音階としては0:50からになります。楽譜でいうと、以下の右手の赤枠を経過音のように半音さげることで、とても誘惑されるワルツになっています。前後の青枠と、間の赤枠(FをEで弾く)で綺麗な半音階が出来上がっています。
Chopin1.jpg

2つ目もわかりやすく、今度はメロディではなく、バスを半音階にした例で、ハイドンのピアノソナタ59番の第3楽章です。

こちらの15:00頃をお聞き下さい。こちらも誘うようなお洒落な演奏です。以下の楽譜赤枠が半音下げている部分ですが、前後の青枠の音とあわせて、3小節かけて、ゆっくり下るバスを作っています。
Haydn1.jpg

また、2楽章の最後 12:00 頃にも左手のラインで半音階を作っています。こちらもとてもお洒落。
Haydn2.jpg


最後は、細かくてわかりにくいですが、ショパンのバラード4番のコーダです。

9:10頃に右手に一瞬お洒落な半音階が出てきます。以下の赤枠が変えた音で、その前後の青枠の音とあわせて半音階を作っています。普通に聴いているとついつい通りすぎてしまいますが、このように表現の最大限の追及をしながら、考えて演奏を作り上げていることがよくわかります。
Chopin2.jpg

今回は、演奏と楽譜を使いながら、スルタノフの魅力の1つをご紹介してみました。
もし、この手の半音階加工の例で、ご紹介していない見落としなどがありましたら、是非お知らせ下さい。皆さんと共有したいと思います。
posted by Murakami at 12:36| Comment(0) | 演奏

2018年01月13日

ショパンのノクターン13番の演奏(11歳)

スルタノフが演奏するショパンのノクターン13番といえば、一般的には、ショパンコンクールの2次予選か、もしくは東京公演のライブ録音がよく聴かれていると思います。

スルタノフは本格デビューする前の、子供時代の録音も結構ご家族によって大切に保存されており、その一部はインターネットで確認が出来ます。スルタノフが11歳の時に演奏したものがあるのですが、今このツイートが少しBuzzっているのでご紹介したいと思います。




ツイートして下さった宮崎さんはネイガウスなどのロシアピアニズムを研究されている、才能あふれるピアニストで、私も大変尊敬している方です。11歳の時の演奏というと、そもそも録音の音質やピッチの問題もあり、また、成熟してからの演奏が残っている曲はあまり進んで聴いたりしないのですが、確かにこうお勧めされて聴いてみると本当に素晴らしい演奏です。「音の陰影」、「情感」、「時間感覚」、わかりますでしょうか。人によっては、20代で残した他の録音よりもこちらが好み、という方もたくさんいらっしゃるのではないかと思いました。
また、コンクールの時の演奏と、多少音が違うので、使っている楽譜なども異なるのかもしれません。5:28あたりの演奏が、意図的なのか、こういう版があるのか、興味深いところです。
6分少しの演奏ですので、11歳の時だからといってスルーすることなく、是非1度じっくり聴いてみて下さい!

参考:ショパンコンクールの2次予選での演奏
posted by Murakami at 18:31| Comment(0) | 演奏