2019年10月13日

スルタノフ編 "I love you"

少し詳しいスルタノフファンであれば、スルタノフが尾崎豊の楽曲を演奏して"Jewel"というCDにしていることをご存知かと思います。この中には、名曲 "I love you" など、合計13曲が収録されていて、YouTubeでも一部は聴けますし、日本のみならず海外のスルタノフファンからも注目されていました。

この中で、その代表作 "I love you" が、先日行われたスルタノフ生誕50周年記念コンサートで山口雅敏さんが採譜して初演されました。その時の映像がありますので、皆さんと共有したいと思います。


楽譜があれば弾かれるものでして、この動画の公開からまもなくして、以下のような動画もPTNAのチャンネルで公開されています。


答え合わせのようですが、スルタノフ本人による演奏は、こちらになります。当初は楽譜もないものでしたが、見事な再現だと思います。


このCDですが、昔は入手が難しくオークションなどで手に入れていました。私も2回ほど購入して、1枚はポーランドのスルタノフ研究家のMarta Polanskaさんにお送りしました。今では、Amazonなどでも中古品を大変お安く買えるようです。


この話には続きがあります。2004-2005年頃、私が運営していた当時のスルタノフの応援ページにNY在住のある方から以下のような書き込みがありました。(一部固有名詞マスキングしました)

先程のメールにて案内すれば良かったのですが、皆様に宣伝というか御報告が有ります。
1997年にテイチクから発売された『アレクセイ・スルタノフ/尾崎豊楽曲集「Jewel」』
を、リマスタリングCD+1997年ダラスでの録音風景の映像DVDを本年12月頃に発売させて
戴くことになりました。今、NYにてリマスタリングとDVDマスターを制作中です。
日本でのレコード会社はほぼ決定しておりますが、発売日に多少の変更が有ると思いますので、
最終決定後皆様に報告させていただきます。
価格は、CD+DVDの2枚組で3,800円を予定しています。DVDの映像は2〜30分位ですが、「Jewel」のリハーサルで、初めての楽曲に挑戦するスルタノフ氏のリアルな姿が印象的です。
また、スルタノフ氏の奥様から写真の提供もさせて戴き、DVDには映像の他に写真館のようなトラックも用意致しました。
さて、当サイトの管理者の方とはお話をさせて戴いてはおりませんが、このサイト経由での購入希望の方には、割引や先行発売等の特典を考えております。
当サイトの管理者の方とは面識も無く、断わりも無しに、宣伝まがいのことをしでかし、失礼を致しております。ファンの皆様へ一刻も早くお伝えしたく、このような書き込みをしたことをお許し
下さい。
株式会社XXXXXXXXX
(弊社のサイトは現在制作中です。スルタノフ氏のCD+DVD発売時に、オープンする予定です。)
プロデューサー XXXXXXXX


この書き込みをきっかけとして、私も、ライナーノーツを書かせて頂きまして、商品になる予定のDVDも視聴させて頂きました。手元にそのDVDがありますが、そこには、スタジオでコード譜のような楽譜を見ながら、編曲を楽しみながらリハーサルをするシーンや、本番テイクのシーンなどが映っています。残念ながら、おそらくその後何かの事情で発売はされなかったのだと思います。
このDVDを頂くにあたり、守秘義務契約自体は結局結ばなかったのですが、それ相応のお約束をしたので、親しい人にも見せず私の手元でお蔵入りになっています。
Jewelは音源だけだったので、本当にスルタノフが弾いているのか、という疑問もあるかと思いますが、間違いなく本人が演奏したものだと断言できるものです。

ジャケットまで作られていて、このようなものになりそうでした。一応ノイズをかけてあります。
DallasInSummar.jpg

以下はほんの一部ですが、私も、このような感じで結構長めのテキストを書いていました。いつかどこかで使えればと思います。
DiS-notes.jpg
posted by Murakami at 11:03| Comment(0) | 演奏

2019年09月07日

第13回ショパン国際ピアノコンクールでの演奏映像(完全版)

スルタノフが参加した1995年の第13回ショパン国際ピアノコンクールですが、幸いなことに全てのステージにおける演奏の映像が残っています。これまで YouTube では断片的に公開されていましたが、生誕50周年をお祝いして、このたび全てのステージのノーカット版完全映像が公開されました。

1次予選の映像:
バラード第4番 ヘ短調 op.52
練習曲 ハ短調 op.10-12
練習曲 ホ短調 op.25-5
練習曲 嬰ト短調 op.25-6
特に革命のエチュードは、チェルニー・ステファンスカが「こんな凄い革命は聴いたことがない」と言ったこともあって話題になりました。また、op.25-5 と op.25-6 は貴重な録音という価値もあります。
コンクール出演者の中には、この3度のエチュードを聴いて、帰りたくなったという人もいたそうです。


2次予選の映像:
夜想曲第13番 ハ短調 op.48-1
スケルツォ第2番 変ロ短調 op.31
24の前奏曲op.28より、20〜24番 op28-20,21,22,23,24
ワルツ第1番 変ホ長調 op.18
ポロネーズ第6番 変イ長調 op.53
スルタノフの2次予選はショパンコンクール史に残る伝説の1つでしょう。この映像の中でも、ワルツ1番の演奏後に、本来控えるべきであるところ、聴衆が思わず拍手をしているのがわかります。
また、最後のポロネーズ後はこちらの動画では切られていますが、拍手は10分以上続き、次の出演者がステージに出られなかったという伝説があります。純粋なショパンファンからも高い支持があったこのポロネーズですが、ポロネーズ賞とはなりませんでした。
英雄ポロネーズは、ライブでの演奏ではよく左手のオクターブを変えることがありますが、この時は楽譜通りに演奏しました。しかし、最後の最後に、つい音が足されてしまったのは、ファンの間で語られるところです。


3次予選の映像:
マズルカ第33,34,35番 op.56-1,2,3
ピアノ・ソナタ第3番 ロ短調 op.58
3次予選のソナタの演奏は、3楽章がゆっくり過ぎるところもあって、審査員の評判はあまりよくありませんでした。そうはいっても、このソナタ3番はコンクールを含め何度も演奏されたもので、本人としては自信のレパートリでしょう。
マズルカの op.56-1 は貴重な録音です。


本選の映像:
ポーランド民謡による幻想曲 イ長調 op13
ピアノ協奏曲第2番 ヘ短調 op.21
この協奏曲の演奏は本当に伝説です。ワルシャワの"ジチェ・ワルシャヴィ紙"は、「スルタノフが目ざましく華麗にコーダを弾き終えたとき、ピアニストとして自信をなくした人はひとりやふたりではなかったろう」と書きました。この演奏の素晴らしさについて語る音楽家も大変多いです。ショパンコンクールではよくあることですが、ピアニストが弾き終わった後、オーケストラを待たずにすごい拍手も映像から確認出来ます。これほど素晴らしい演奏ですが、残念ながら、コンチェルト賞も該当なしでした。
ポーランド民謡による幻想曲は珍しいレパートリですが、この年のコンクール課題で、貴重な録音が残りました。
posted by Murakami at 11:35| Comment(4) | 演奏

2019年06月30日

チャイコフスキーコンクールでのスルタノフ

つい先日までモスクワで開催されていた、楽しいチャイコフスキーコンクールが終了しました。最近は全てが配信・アーカイブで見れるようになったこともあり、より視聴者も楽しめるようになり、また同時にいろいろなことに詳しくなり、耳も鍛えられてくるかと思います。

スルタノフは 1986年(当時16歳) と 1998年(当時28歳) のチャイコフスキーコンクールに出場していますが、幸運にもその録音は全て残されており、さらには録画も多くが残っています。
ちょうど2019年のチャイコフスキーコンクールも終わったことですし、中には全演奏を視聴された方もいると思います。今このタイミングで、当時のスルタノフの演奏を確認することは大変興味深いと思い、ご紹介させて頂きます。

1986年(16歳)の演奏:
まず動画で残されているのは、このコンクール全体のドキュメンタリーからの抜粋となるほんの一部になります。

まずはナウモフ先生のレッスン風景を含む、スケルツォの2番。映像から、例えば左手でバスを弾く時の小指と手首の使い方など、この時期に既に弾き方が完成されていることがわかります。演奏後のシーンでは、ナウモフ夫妻から大変愛されていることもよくわかります。


そして、こちらは1次予選の熱情ソナタの最後です。小指骨折の中、舞台裏で痛み止めを使いながら弾いたという伝説の演奏です。


この他、幸いなことに、このコンクールの1次予選、2次予選の録音は全て残されています。

1次予選の演奏。平均律と、チャイコフスキーの四季から11月が貴重です。


2次予選の演奏。プロコフィエフのソナタ3番と、ボリス・チャイコフスキーのアレグロという曲の演奏が貴重です。


この時のコンクールは、中村紘子さんが執筆した「チャイコフスキー・コンクール」の時でもあるため、併せて読むとより興味深いと思います。


1998年(28歳)の演奏:
1998年はインターネットの動画配信技術はまだなかったのですが、幸運にも全ての演奏の録画が残されております。

予備審査より、その1


予備審査より、その2。この時演奏した、四季の11月は貴重だと思います。


1次予選より、その1


1次予選より、その2


2次予選より、その1:ドゥムカ


2次予選より、その2:ショパンソナタ第3番 1, 2 楽章


2次予選より、その3:ショパンソナタ第3番 3, 4 楽章


2次予選より、その4:プロコフィエフソナタ第7番 1, 2 楽章


2次予選より、その5:プロコフィエフソナタ第7番 3 楽章(もはや伝説)
終わった後、アナウンスも入り、帰る人もたくさんいますが、それでも拍手が続けられている音が聞こえます。


だいぶ後からCDにもなりました。コンクールでは結果的にドレンスキー教授門下のピアニストが活躍しましたが、スルタノフの演奏もそれだけ注目度が高かったのでしょう。
posted by Murakami at 11:48| Comment(2) | 演奏

2019年05月19日

ショパン:即興曲第3番

幸いなことに、スルタノフの録音は子供の頃のものに演奏したものが残っていますが、その中には、大人になってから録音が残っていない貴重なものがあります。その曲の1つが、ショパンの即興曲第3番です。
スルタノフが演奏するショパンの即興曲といえば、CDのタイトルにもなったくらい幻想即興曲が有名ですが、子供の頃には実は第3番も演奏していたようです。

幻想即興曲に関しては、1981年頃の録音は残っているようですし、モスクワデビューとなった Avicenna(980-1037)の1,000周年記念コンサートでウズベキスタン代表として幻想即興曲を演奏した、という記録はあるようですが、おそらくレパートリにしたのは、こちらの即興曲第3番のほうが先かと思います。
この録音は1979年の演奏で、まだナウモフ先生の影響がなく、ポポヴィチ先生の指導によるものと思われます。



録音状態は決してよくないですが、ポポヴィチ先生の確実な指導のもと、スルタノフの才能がよく見える演奏です。
posted by Murakami at 17:16| Comment(0) | 演奏

2019年04月28日

ショパン:バラード第4番

スルタノフの得意レパートリの1つにショパンのバラード第4番があります。
幸いにして、この曲の録音はわりと残されているのですが、少し整理してみます。

まず、最初に弾いた時期ですが、これはあまりはっきりしていません。子供の頃はバラード1番は弾いていたようですが、4番については記録がありません。
私の手元にある記録では、「1990年1月10年 ミュンヘンのHercules Hallで演奏したかもしれない、とありますが、例えば1990年5月3日のカーネギーホールなどを含め、このクライバーンコンクール優勝記念コンサートシリーズでは、弾かれたという記録は基本的に一切ありません。録音も残っていません。

その次は、1991年8月にTELDECのCDに録音したものになります。
このCDで聴ける演奏は、後ろで紹介する3つのライブ録音に比べると、別人のような演奏です。(この曲目に限らず、このCDの演奏はライブの演奏とはだいぶ異なります)


一般的に私たちが聞いているのは、1995年のショパンコンクールのライブ録音、1996年の東京公演のライブ録音(1996/3/28)、1999年のワルシャワ公演のライブ録音(1996/10/6) の3種類でしょう。
ショパンコンクールの1次予選での演奏は、コンクール補正が多少かかっていますが、同じく1次予選で弾いたエチュードとあわせて、この年のコンクールの優勝者を確信させるに十分な、コンクール史に残る名演だと思います。


時間軸的には、その後の1999年3月に日本公演で弾いた演奏が次になります。
ショパンコンクールの演奏に似てはいますが、演奏会用の細かい工夫が入っています。

(動画は残念ながら途中で切れていますが、同じ録音を「伝説の日本ライブ」のCDでも堪能できます)


最後は、その年の秋のワルシャワ公演のビデオです。基本的に上記の演奏と近い表現ですが、はっきりした違いも見えるので(例:1:58あたりの内声など)、そういう違いなども楽しめるとよいと思います。
posted by Murakami at 20:38| Comment(3) | 演奏