2021年01月26日

1995年TCUでのマスタークラスの動画

これまで公開されたことのない、スルタノフのマスタークラスの大変貴重な動画が投稿されました。
1995年の夏、クライバーン協会の主催でフォートワースのTexas Christian Universityで、2週間のマスタークラスが開催され、スルタノフも講師の1人として参加しています。

この時の大変貴重な動画が残っていました。


1人目の受講生は、ショパンの練習曲 Op.25-12を弾いています。この曲はスルタノフがクライバーンコンクールで弾いた曲です。レッスンではコードの感じ方、和音の弾き方、ラインの取り方、練習の仕方などが解説されています。模範としてもたくさん弾いています。ほんの一瞬ですが、参考に Op.10-1を弾いているのも嬉しいです。生徒の演奏も、指導にあわせてどんどん音楽的になっていくのがわかります。

2人目の受講生は、リストの超絶技巧練習曲の10番です。この曲はスルタノフが残した録音はありませんが、1999年のエリザベートコンクールでは演奏しているので、レパートリにはあったはずです。楽譜を生徒に渡したまま弾いているシーンもあり、たくさん模範も弾いているので1995年の段階でレパートリであったのでしょう。
冒頭の両手の練習の仕方を、様々なパターンについて丁寧に教えています。ショパンのバラード4番の冒頭に倣ってみたり、水が止まらずに流れるような話をしているようです。一瞬のキレのよい和音の鳴らし方(ペダルを上手く使って)なども興味深いです。練習時に左手をきちんとやっておくと、演奏する時にもっと右手で歌うことを意識出来る、といった話もしています。フォルテでありながらも、馬の手綱をとってコントロールするように、などの話。クライマックスのフォルテの和音でじっくりゆっくり弾く、というアドバイスもスルタノフらしいです。テンポについても結構指示がありました。

このレッスンがショパンコンクールの前だというのも興味深いですね。ショパンコンクールで、「またスクールボーイに戻った気分だ」と言ったのも理解出来ます。
今となっては本当に貴重なビデオです。音声はかなり埋もれてしまって聴きとれませんが、それでも学ぶところがいろいろありそうです。是非お楽しみ下さい。
posted by Murakami at 22:34| Comment(6) | 歴史