2018年06月23日

スルタノフとホロヴィッツ(番外編)

スルタノフとホロヴィッツに関して、いろいろなエピソードを紹介してきました。最後に1つ興味深いと思ったことを、共有します。

スルタノフ関連の情報源として、言語ごとにオフィシャルサイト相当のものがいくつかありますが、スルタノフの弟、セルゲイ氏が提供しているサイトではロシア語で大量の興味深い資料が提供されています。
Сайт памяти Алексея Султанова

さて、このサイトでスルタノフとホロヴィッツについての出会いなども紹介されているのですが、大変興味深い記述が1つあります。Литературная газета社というロシアの新聞社によるインタビュー記事(1998年7月15日)からの引用です。
И Володя очень долго смеялся и извинялся. Ведь я ему сказал: "Из-за тебя мне пришлось жениться".

この内容は、大変有名な、スルタノフとDace夫人との出会いをホロヴィッツに報告しているシーンで、「ヴォロージャは長いこと笑って謝りました。私は言ったのです。『あなたのせいで結婚することになってしまいまいましたよ』」という内容が記載されています。

この文では、気になる点が2つあります。
1つめは、「あなた」という単語に「тебя (Ты)」を使っているという点です。ロシア語では、2人称の言い方が2種類あるのですが、この表現は「君」に近く、大変親しい関係か子供などに使う、と教科書では習います。
この点について、弟のセルゲイ氏に聞いてみたところ:
「アレクセイとホロヴィッツがもしロシア語で会話して、それが文字通り記載されているとするなら・・・。アレクセイのホロヴィッツへの尊敬、また初対面であったことから"Ты"をいきなり使うことは有り得ない。おそらく、ホロヴィッツがお互いの距離感を縮めるために、"Ты"で話そう、と提案したのではないか」
と言っています。当時の記録から、彼ら2人がロシア語で話したことは間違いなく、ロシアの新聞社へのインタビューであることを考えると、このロシア語文の再現性は高いと思われます。セルゲイ氏の推察の通り、ホロヴィッツの提案により、二人は60歳以上も年が離れていながらも、友達のように会話をしたのかもしれない、と解釈するのがよさそうです。

2つ目に、新聞社のインタビューの中ではありますが、スルタノフはホロヴィッツのことを「ヴォローヂャ」と呼んでいる、という点です。これも、私たちが「アリョーシャ」と呼ぶ以上に、意味があることと思いますが、やはり1度会って楽しい時間をすごした、という背景があってのことなのかなと感じます。

これらをより深く知るには、ロシアでの文化や、ホロヴィッツが周囲とどういう言葉遣いで接してきたか、というのを知る必要があるでしょうが、興味深いお話ですのでご紹介させていただきました。
posted by Murakami at 12:30| Comment(0) | 歴史