2018年04月07日

3度の半音階

前々回、前回と、半音階の魅力リストの半音階というテーマで、スルタノフの演奏を見てきました。
ところで、スルタノフの演奏を聴きながら半音階について一番感じることは、「スルタノフは半音階旋律を見たときは、ここは3度で弾けないかな、と常に一度は考えているのではないか」ということです。半音階に限らず、実際にはいろいろなところでそういう可能性を常に考えていたと思われますし、スケールやトリルが3度に加工された実例もありますが、特に半音階のパッセージに関しては顕著です。

例えば有名なところだと、以下のメフィストワルツがあります。

この動画は、1989年に出場したヴァン・クライバーン国際ピアノコンクールの、予備審査のために送ったビデオです。実際にはコンクールでも同じ形で演奏しますが、コンクールには普通に「Liszt Mephisto Waltz」という形で提出されています。これを、リスト=ブソーニ=ホロヴィッツ編と解釈するケースもあり、確かにブゾーニ編やホロヴィッツ編のエッセンスが盛り込まれているのですが、それよりは少しオリジナルに近く、スルタノフ編というかんじです。

この演奏で、中間部の半音階を3度で弾いています(上記動画の6:08あたり)。ここはリストのオリジナルでは単音で書かれているため、初めて聴くと驚きますが、おそらくこれはホロヴィッツの演奏の影響だと思います。
Liszt1.png

↓(参考)ホロヴィッツの演奏とその楽譜:
Liszt-Busoni-Horowitz - Mephisto Waltz No. 1 (Horowitz) - YouTube

メフィストワルツと共に、リストのソナタにおいても数々の演奏上の工夫がなされており、その1つとして単音の半音階は3度で演奏されています。以下の動画は、1999年3月4日の東京芸術劇場での公演です。

演奏時間として最初に登場するのは 9:10 頃になります。ここに来るまで既に工夫満載ですので、上記のメフィストワルツの演奏を知っている人には、ひょっとすると期待するところがあるかもしれません。もともと入りの一音だけ3度というのも期待させますし、リストとしても技術的制約がなければ、そう演奏する選択肢も考えていたかもしれません。
なお、その後にも、今度は上昇で3度が出てきます。思わず釘付けになる素晴らしい演奏ですので、是非濃厚な30分間を最後までお楽しみ下さい!
Liszt2.png

メフィストワルツはスルタノフが学生の頃から弾いており、もちろんナウモフ先生とも勉強したことだと思います。一方でリストのソナタについては若い頃の記録がなく、1998年のチャイコフスキーコンクールが終わってから、本格的にコンサートプログラムに組み込むため準備していたのではないかと思います。

さて、3度で演奏された半音階でもう1つ有名なのは、なんといっても幻想即興曲でしょう。日本公演でもアンコールでたびたび弾かれては聴衆を魅了しました。以前、ポーランド公演の動画を紹介したので、今回は1997年3月14日の韓国ソウル公演の動画をご紹介します。

以下の楽譜にありますが、4小節を何とも器用に3度で弾いています。
Chopin4.png

最後に、オリジナルが3度の半音階下降で書かれたものの演奏をご紹介します。
ショパンのプレリュード24番の最後の見せ場といえば、この3度の半音階です。まさに圧巻の3度をお楽しみ下さい。1998年1月のフロリダのゲインズビルでのコンサートの動画です。

Chopin5.png

今回は、スルタノフが弾く3度の半音階を紹介してみました。3度で弾くことは幻想即興曲に代表されるように得意技の1つです。今後も他の例などをご紹介していきたいと思います。
posted by Murakami at 17:01| Comment(0) | 演奏