2018年10月21日

Sultanov Encoresシリーズ、ショパンワルツ第7番(op.64-2)

Sultanov Encores シリーズの2つ目は、こちらのショパンのワルツ第7番です。
スルタノフは、1999年の日本公演で、本プログラムの中に入れると共に、アンコールでもこの曲をよく演奏しました。もちろんレパートリとしては古くからあり、11歳の時に弾いた記録なども残っていますが、デビュー後は主に1999年以降に弾いていました。

日本公演でもかなり積極的に弾いていましたが、NHKでの放映に入らなかったこともあり、YouTube時代が来るまで録音を聞ける機会がなかったかと思います。この録音が最初に出回ったのは、ロシアやポーランドでひっそりと出回っていた「Unpublished Sultanov」というアルバムに収録された演奏です。

このCDに含まれるものもそうですし、以下のYouTubeの演奏でも、1999年のザクレブ(クロアチア)の録音と書いてありますが、私の手元の "Unpublished Sultanov" に含まれている音源と比較すると、似てはいるものの、違う日の演奏にも見えます。
いずれにせよ、貴重なライブ録音になります。是非お楽しみ下さい。

スルタノフらしい軽快な速度で、1拍子で弾いているようにも感じ取れます。バスをオクターブ下げてみたり、内声を作ったり、装飾を入れたり、コントラストを出したりするのも、いかにもスルタノフらしい遊びです。この曲は歴史的にも数多くのピアニストがいろいろ弾いていますので、そうした影響もあるのではないかと思います。実際に11歳の時に弾いたという録音からも、子供の演奏とは思えぬ、大人びた音楽性が見られます。
1999年の来日をご存知の方は、懐かしくも思うでしょうし、是非楽しそうに弾くスルタノフの演奏姿を思い浮かべながらお楽しみ下さい。
posted by Murakami at 00:12| Comment(0) | 演奏

2018年10月13日

Sultanov Encoresシリーズ、スクリャービンエチュード(op.8-12)

YouTubeには、スルタノフの演奏がたくさん投稿されていますが、中には大変貴重なレパートリなども見つけることが出来ます。特に、アンコールレパートリには、日本公演でも定番のものから、演奏した事実を知らなかったものまで、様々が存在しており、大変貴重といえます。
スルタノフのご家族が "Sultanov Encores"シリーズとして、いくつかを公開して下さっていますが、そのタイトルがついていなくても貴重な録音がいろいろとありますので、そういうものをご紹介していきたいと思います。

今回は、スクリャービンのエチュード op.8-12 です。スルタノフは日本公演でも1999年はほぼ毎回このエチュードをアンコールに弾いていましたし、97年にも披露しています。1998年のチャイコフスキーコンクールでも弾きましたし、古くは14歳の時の録音も残っていますので、得意としてきたのだと思います。スルタノフが敬愛するホロヴィッツの得意レパートリということもあるでしょう。演奏解釈も、時代によっていろいろと変わっているのも興味深いです。

以下の音源は、1997年の大阪公演からのライブ録音です。大変素晴らしい演奏です。よく言われることですが、中間部の内声の出し方は、スルタノフ特有で大変魅力的です。強烈なフォルテと美しい弱音のコントラストがまた素晴らしいです。



演奏の最後には、待ちきれずにブラボーを叫んだ観客の声も入っています。
実はこの日の大阪公演(1997年3月30日ザ・シンフォニーホール)は、本当に特別な熱気に包まれており、アンコールの盛り上がりは異常でした。記憶が正しければ、3曲のアンコールを演奏し、会場に明かりがついて公演は終了になったはずですが、永遠に終わらない拍手と帰らない聴衆に対して、仕方ないなーとばかりに再度照明を落として2曲を追加で弾いたはずです。私も会場にいましたが、こんなことってあるのだな、と興奮しました。この録音も、その伝説の公演の一部と思うととても貴重であり、それをこうして聴くことが出来るのは大変嬉しいことです。
当ブログをお読み頂いている読者様の中にも、この日の公演に行かれた方はいらっしゃいますでしょうか。
posted by Murakami at 08:33| Comment(0) | 演奏

2018年10月07日

モスクワ音楽院の第29番教室

モスクワ音楽院には、ネイガウスの教室として有名な第29番教室(Room 29)があります。
スルタノフの師匠である、レフ・ナウモフ先生もこの教室を使っていましたので、スルタノフも学生時代、まさにこの教室で、学んでいました。

この29番教室は、モスクワ音楽院の中でも大変意味のある教室であり、既にレポートを書いて下さっている日本人の方もいらっしゃいます。だいぶ古いレポートもありますので、その歴史の重みを感じます。
- モスクワ音楽院第29番教室
- モスクワ音楽院の

さて、最近の29番教室の状況を、モスクワに留学中の、とあるスルタノフファンの方が報告して下さいました。
是非この写真から、スルタノフが学生時代に勉強していた、というオーラを感じ取って下さい。

伝統の29番教室のドア:
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教室の中:
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このように2台のピアノが並んでおり、壁にはギレリス、ソフロニツキー、ザーク、ゴルノスターエヴァ、ナセトキンと並んでいます。この部屋の写真の反対側には、ネイガウスとナウモフも飾られています。まさに伝統の教室ですね。

さて、以下は、1986年のチャイコフスキーコンクールのドキュメンタリービデオで、18:55からは教室でナウモフ先生と、その奥様のイリーナ先生にレッスンを受けているスルタノフのシーンがあるのですが、果たしてこの教室は29番教室でしょうか。今から30年以上も前の部屋ですので、ちょっと判断が出来ませんが、そんなようにも見えます。


いずれにせよ、ドキュメンタリーは 16歳のスルタノフのシーンが含まれる、大変貴重なものです。チャイコフスキーコンクール自体も興味深いです。是非お楽しみ下さい。
posted by Murakami at 00:07| Comment(0) | 歴史

2018年09月29日

クライバーンコンクールのドキュメンタリーより

クライバーンコンクールのドキュメンタリービデオは、単に演奏の記録だけではなく、スルタノフについて様々な視点から知れる重要な資料です。

本当はDVDを入手するのが最もよいのですが、現在は例えば Amazon ではなかなか入手が難しくなっています。


どうやらクライバーン協会のショップでは常識的なお値段で購入出来そうですので、お持ちでないスルタノフファンの方は、是非こちらから購入されるとよいと思います。
Eighth Cliburn Competition (1989) Documentary DVD: Here to Make Music

さて、全てではありませんが、その一部は YouTube で公開されています。


演奏もそうですが、2:40頃から、サン=サーンスのコンチェルトをキーボードで遊んだり、またちょっとしたジャズを弾いてみたり、ガーシュウィンのラプソディー・イン・ブルーの一部を弾いているシーンは大変貴重です。ラプソディー・イン・ブルーは、1991年の7月20日に、演奏した、という記録がありますが、既にこの頃からレパートリに入っていたとは興味深いです。
サン=サーンスのコンチェルトは、エリッソ・ヴォルクヴァゼが本選で演奏するのですが、出場者の全員が大変仲良くしているのがわかります。DVDを見るともっとわかりますが、出場者たちは本当に仲良くなるようです。

貴重という意味では、ドヴォルザークのクインテットのシーンも貴重です。私が知る限り、クインテットの残された録音は流通されておらず、このシーンだけになります。

最後に、このコンクールのために書かれた、W.シューマンのチェスターというピアノ曲ですが、こちらはスルタノフの録音がばっちり残っており、映像の中でも一部を見ることが出来ます。
以下の通り楽譜も市販されていますので、ご興味がある方は是非手にとって演奏してみるとよいと思います。
Chester Variations For Piano
posted by Murakami at 17:20| Comment(0) | 一般

2018年09月22日

クライバーンコンクールのビデオ予選

スルタノフのクライバーンコンクールに関してはこれまで様々な形で報道されていますが、案外きちんと伝えられていないのは、予備予選のビデオ審査についてです。

スルタノフがビデオ審査で、以下のメフィストワルツを弾いたことは大変有名です。


この映像が、クライバーンコンクールのビデオ審査のために収録されたことは、ドキュメンタリーフィルム"Here to make music" の中でも数秒公開されているため、明らかです。

ここでの疑問として、なぜスルタノフは当時モスクワに住んでおり、モスクワ音楽院に通っていたにも関わらず、サンクトペテルブルクでビデオを撮影したのか、ということです。
このことについて、弟のセルゲイ氏について聞いてみたところ、「あのビデオはコンクール運営事務局が撮影したもので、その会場がサンクトペテルブルクであったから」ということです。最近ではビデオ審査というと、コンテスタントが自身で撮影するイメージがありますが、当時の映像技術や公平性などを考えると、そういうものなのかもしれません。

この内容の裏づけのために、以下の本を確認してみました。


この P.222-227 に今回のことに関連する内容が書いてあります。クライバーンコンクールでは、ビデオ審査を公正にするために録音装置などを工夫して、各都市における条件を均一にして、17の会場の音響的な相違が最小限度におさえられる形で実施したようです。
また、その結果として「おのおのの応募者は、自分が演奏した45分のリサイタルから、25分を選び、それに従いテープは編集された」ということです。スルタノフがどういう45分のリサイタルをしたかは情報がありませんが、少なくとも以下のラフマニノフのエチュードもあわせて収録されたと思います。



ソ連からの出場者については以下の記述があります。
ソ連からの4名は、当初の15人のグループから、まずソ連側がレニングラードで選考を行い、そのうちから5名が、クライバーン当局により、ビデオ撮影候補に選ばれたものだった。

最終的に、ソ連からは以下の4名が参加しました。
- アレクセイ・スルタノフ(第1位)
- アレクサンドル・シュタルクマン(第4位)
- エリッソ・ヴォルクヴァゼ(第6位)
- ヴェロニカ・レズニコフスカヤ

こちらが、オフィシャルな結果になります。USSRは強いですね。
EIGHTH VAN CLIBURN INTERNATIONAL PIANO COMPETITION
posted by Murakami at 18:48| Comment(0) | ご家族